【開催報告】第3回研究会プレWebセミナー【テーマ:環境】


社会デザイン・ビジネスラボ
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開催報告

数ある社会問題の中でも、重要な要素として注目されるのが環境問題です。 環境に関する社会課題を考えるきっかけとなるウェブセミナーを開催いたしました。 本セミナーでは、環境問題の中でも多くの問題の根幹ともなる「水」をテーマとして、ビジネスと環境問題の関係性を探りました。


日時:2021年1月28日

目次

【講演①】社会デザインビジネスと環境 〜3つ目のテーマ設定へ向けて〜

はじめに、社会デザイン・ビジネスラボ会長、立教大学社会デザイン研究所所長の中村陽一より 「社会デザインビジネスと環境〜3つ目のテーマ設定へ向けて〜」と題して講演を行いました。

社会デザイン・ビジネスラボ研究会第3回目のテーマは環境ですが、環境の危機は同時に人類の危機でもあります。 森林破壊や環境への影響など、人類の新たな活動は地球に大きな影響を与えており、 この状況は「人新世」と呼ばれる新たな地質年代だと位置付けられています。

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「人新世」においては、天然資源をはじめとする資源の減少、重大な様々な環境汚染が引き起こされ、 世界を成り立たせる根本の仕組みが崩壊しかけています。これは「プラネタリーバウンダリー」惑星の限界に対して、 人類の数や社会経済的な活動の量がそれを超えるところまできてしまっているということを示しています。 「空っぽの世界」から「いっぱいの世界」へと惑星の状況が変化してしまいました。

そんな状況の中で、92年のリオ宣言、MDGsを経て、現在は2030アジェンダ、SDGs が注目を集めています。SDGsの17分野169のターゲットのうち、11分野が社会経済指標の分野だとされています。 環境分野の指標は明確には3つとされていますが、最終的にはこれらの全ての分野は統合されて解決される必要があります。 例えば、環境指標が実現されなければ社会経済指標の土台そのものが崩れてしまうという認識が大切になってきます。

  「エコロジカル・フットプリント」と呼ばれるように、人間の経済活動による様々な足跡を見つめ直す必要があります。 社会デザインへと結びつけると、短期的な実利優先な投資ではなく、それを超えた投資やビジネスの構築が必要になってきます。 「ブルー・エコノミー」「分散型エネルギー」「エコポリス」「サーキュラーエコノミー」「金融改革」など、 技術や仕組みによってより環境を意識した社会をデザインできます。環境の問題を取り残さずに、 「再生力のある経済」を構築していく必要があると思います。

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【講演②】サステナビリティ 、環境問題に企業が取り組むために「水」をキーワードに考える

つぎに、株式会社エンパブリック 代表取締役、ソーシャル・プロジェクト・プロデューサーの広石 拓司 様よりご講演をいただきました。 講演では「サステナビリティ 、環境問題に企業が取り組むために〜「水」をキーワードに考える」と題し、水と環境問題の関わり、 企業の取り組み事例をご紹介いただきました。

SDGsの前身となるMDGsでは貧困問題が主な焦点となり、多くの取り組みがなされてきました。発展途上国の開発、支援を中心とし、 1995年頃には世界で33億人が絶対的貧困と言われる状況にあったのに対し、約30年後には絶対的貧困に置かれる人々は11億人まで減少しました。 しかし、その裏では環境破壊は深刻化が進み、先進国からの発注によってよりやすい人件費での仕事が生まれたりもしていました。 途上国の問題だけを解決しようとするのではなく、世界の問題としての解決が必要だというのがMDGsの気づきでした。

20世紀の考え方では、経済と社会・環境が分離されていたのに対し、21世紀には経済も社会も共通の舞台にあると考えます。 企業が生き残っていくためには競合を意識するだけではなく、変化し続ける社会や環境を考える必要が生まれました。 そのため、サステナブルな経営とは、自社事業の中で環境への負荷軽減や社会貢献を意識することになりました。

そのような状況で、「水」についても多くの側面、ステークホルダーを抱えた問題として捉えることができます。 SDGsにおいては、直接的には6番の「安全な水とトイレを世界中に」といった観点で捉えられることがありますが、 実際には全ての項目に関わった問題とも言えます。例えば、汚い水しか飲むことのできない地域では健康の問題に、 水の不足によって食料が不足し飢餓の問題に、気候変動の影響によって間伐と大洪水が起きやすい、 紛争の原因として水をきっかけにしたものが少なくない、などの問題が挙げられます。

企業の商品を作るのにも非常に多くの水を使用しています。例えばコーヒーの生産にも、 1杯のコーヒーを作るために約140リットルの水が使用されていると言われます。 そのような状況において、企業の動きも変化が生まれつつあります。実際に手元に届く商品以外にも、 生産過程や消費行動に着目した取り組みがあります。

例えば、ジーンズのリーバイスでは、調査によってジーンズ1枚に3800リットルの水が使用されていることを明かしています。 原料となる綿の栽培はもちろん、生産過程においても大量の水が使用されていたため、 工場等での水の使用量を減らすことに目をつけました。 さらに、他に水の使用量が大きい場所としてコンシューマーケアが挙げられました。消費者の洗濯の量が多いことに気づき、 洗濯をそれほどする必要はないことを伝えるコンテンツづくりなどを進めました。 他にも、乾燥機の使用を抑えて天日干しがいいことを伝える、 長年履いた味のあるジーンズがかっこいいといった価値観を作るブランディングといった戦略もとっています。

リーバイスの取り組みからも分かるように、価値観のアップグレードによるバリューチェーンの改良は重要なポイントです。 また、企業は資源を使う量を減らすだけではなく、自然資本としてお金と同じように増やしていくことも求められています。 今、問われていることは「問題の一部でいたいのか、解決の一部になりたいのか」ということです。 「水」の問題をはじめとし、環境問題を広くとらえて、自分たち、自分の会社がかけている負荷について自覚することから 始めるのが大切かと思います。

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パネルディスカッション

セミナーの後半では、登壇者の皆様に加え、社会デザイン・ビジネスラボ事務局長の三尾幸司も加わり パネルディスカッションを実施しました。

■環境問題を「楽しく」考えることの必要性

中村: 今回は「水」に絞って具体的な事例なども出していただいて、 私たちの日頃の身近な暮らしと結びつけて考えなおすきっかけをいただいたなと思います。 地球環境みたいな言い方は、大事だけれども、なかなか自分の明日明後日の暮らしにパッと結びつきづらいので、 行動変容を結びつきにくいですよね。 リーバイスのやり方にも結びつきますが、身近で楽しみながらやっていく工夫が必要だなと思いました。

広石: そうですよね。楽しさや面白さってきっと大事で、「新しいものが嬉しい」ではなくて、 「今日、一生ものに出会えた」とか「最高の一品を買ったから長く着られる」 みたいな会話が生まれるデザインが豊かなのではないかと思いますね。

三尾: 幸福感とかウェルビーイングという言い方もありますが、 商品への思い入れを作っていくのはマーケティングとしても面白いですし、環境問題を身近にも感じられますよね。

■消費者・社員を活動に巻き込むために

三尾: 社会貢献ビジネスにいろんな人を巻きこんでいく難しさってあると思うのですが、そこはどうお考えでしょうか

広石: ちょっと高くても環境に良い商品を買う人って今の日本だとまだ12%くらいなんですよね。 これはここ20年くらい変わっていなくて、難しいことではあると思います。 でも、コンビニの商品のカロリー表示なんか20年前に比べてかなり大きくなって、 その結果嫌でも目に入って気にするようになりましたよね。 だから、意識の高い人が、選択・発信をし、そこに企業がついていく、 そして意識の高く似合い人もいつの間にか自然と環境にいい商品を買うという状況になるのが理想だと思います。 意識の高低に関係なく、システムとして、全員が環境にいい行動をしているような仕組みを作るのが大事だと思います。

中村: いい意味で「パクって」いくことも大事だと思います。 NPOの活動や市民活動によって声が上げられ、それを徐々にビジネスや法として、制度、システムとして「パクって」いく。 言い方を変えると協働していくことが大事ですね。

■ソーシャルビジネスに取り組む人へ

広石: つい僕たちは、目の前のことや手の届くことを考えがちだけれど、その奥にはシステムがあります。 知らないうちに大量の水を消費していたり。自分の事業が与える環境負荷について常に振り返る視点を持ってほしいですね。 サステナブルなビジネスという視点で、ソーシャルビジネスって長い視点で見たら儲かる事業だよねと思ってもらえたら成功だと思います。

中村: これまでの世の中では「ニーズ」に即してビジネスが作られてきました。 その良さもあった一方で、環境にまで消費社会の原理が立ち入ってしまいました。 例えば軍事ビジネスなどもそうですが、短期的には利益が上がるビジネスでも、中長期的にはよくない。 時には、中長期という視点で「ニーズ」を否定することも必要だと思います。

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