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岐阜県美濃加茂市出身。実業家、株式会社 CINQ(サンク)代表取締役。 イベント企業で音響デザイナー・オペレーターとして活動後、2006年に妻の地元である福井県の山村に移住、 義父の経営する林業会社に入社。2012年、会社の先輩と2人で独立してCINQを立ち上げる。 2017年、法人化して利用間伐、皆伐、特殊伐採、薪の生産・販売、木製什器ブランドFRAME運営、 限界集落寸前の村起こしとして、廃園になった保育園を改装して薪火の見えるレストランla clarté (ラクラルテ)をオープン。
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プロフィール、団体の紹介

「CINQ(サンク)」の現在の中心事業は林業です。そのなかでも利用間伐、皆伐、特殊伐採、 薪の生産・販売などを行う職人集団です。薪の生産に関しては障がい者施設の方々や、 高齢になった村のおじいちゃんたちにも協力していただいて生産を行っています。

社名の「CINQ」は英語のThank you、「おかげさま」をもとに作りました。 「CINQ」という綴りはフランス語で「5」を意味する言葉でもあり、似たような発音で2つの意味を持つ社名です。 林業の会社だけれども、林業以外のことにも関わっていきたいという気持ちも込めて、 「林業」と言った言葉は使わずに、短くてあまりない社名を考えました。

そのなかで3年ほど前に、間伐材を使った什器ブランドFRAMEも立ち上げ、運営を行っています。 グッドデザイン賞を受賞し、好評いただいております。

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また、会社は別になりますが廃園になった保育園を改装したレストラン「la clarté (ラクラルテ)」の運営も行っています。 こちらはどこの席からも薪火が見えることをコンセプトに設計され、「CINQ」の事業で採れた木材が薪として使われていたり、 店内のインテ リアにも使用されています。

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村おこしの一環も担っており、結婚式やヨガ、演奏会などイベント会場としても開いています。

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林業の現状

林業は戦前から続く仕事で、もともとは家を建てる木材を生産する商売でした。 戦後、経済成長を見越してたくさんの木が植えられましたが、それが収穫できるのは50年後。 マンションが増え、木造住宅が減っていくことは予想されていませんでした。 これによって木の価格は、大暴落し現在の市場でも値崩れが起こっています。

しかし、その一方で林業は決してなくなってもいい職業とはいえません。

都会に住むとあまり実感が湧きにくいかもしれませんが、どこの地域もどこかの川の流域にあります。 川から街を守るのは、実は山の本来の機能で、山の手入れ不足によって氾濫が起こります。

林業というと、木を切るから環境破壊というイメージもあるかもしれませんが、 山は木を間引く間伐をして手入れすることによって機能します。

職場としても、足の踏み場が悪ければ死人が出るような危険な現場であり、 またドローンなどでも入ることのできない現場を担う貴重な仕事です。 その価値が、金銭的には評価されていないのが現状です。

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また歴史が長く、古いしきたりが多い業界でもあります。 山の木を買うにも、数百万円の現金でのやり取りがなされていたり、信用度の意味で古くからの老舗が大きな力を持っていたりします。 田舎での林業では特に、いくらメディアに出演しても山主となる高齢者の方々や、 同業者の方々には訴求できず、なかなか新しい物が受け入れられにくいということもあります。

一社だけでは、課題は解決できない

林業という本業を通して、山や街を守る環境保全や防災の仕事にも繋がっています。 他にも、先に述べたように「CINQ」は障害者雇用や村おこしなどにも事業を通して関わっています。

これに至った背景としては、ある勉強会で聞いた「公益資本主義」という考え方があります。 資本主義の倫理だけを追いかけた事業では、間違いなく50年後、100年後に生き残っていくことはできません。 元々、僕自身はそれほど社会貢献には興味がなかったのですが、この勉強会で、事業を通して 「社会課題を解決していくこと」と「社会課題を生まない企業になる」ことの二つが大切であると意識するようになりました。

例えば、障害者雇用であれば税金を使ってもらうだけではなくて、税金を払う側にもっと回ってもらうという意識を持つと、 自分たちにも関連・メリットがあると考えられるようになります。

僕たちが解決しようとしている問題は、林業はもちろんですが障害者雇用、高齢者雇用、地域活性化など様々な側面を持ちます。

今、スタートアップやベンチャーの界隈では一個の課題に対してテクノロジーを駆使してピンポイントで 解決にあたろうとするのが主流かと思います。しかし、社会課題は一個だけでは存在していなくて、様々な問題が絡んでいます。

林業だけで解決に当たれる問題は限られているけれど、他の事業や他の業界の同じ方向を向いた企業と絡むことで解決の 間口を広げられることもあると思います。 「一社で一つの課題ではなくて、多数の会社で多数の問題を解決する」方向へと向かって、 まだあまり開かれていない林業の業界を切り開いていきたいなと感じています。

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価値ある物が評価される世界へ

現状では、木を切ることで上げている売り上げが大きいのですが、今後社内ではその割合を50%まで落とすことを目指しています。 木材価格が落ちる一方で、企業を存続し他の課題の解決にも当たっていくために別の事業の割合を増やしたいと思っています。

その一方で、林業の価値を上げていくことも大切な役割だと考えています。 命がけで働いているけれど木材価格がネックとなり給料はそれほど良くないという現状では、業界は伸びていきません。 その裏側には、社会に間伐、あるいは林業の必要性がしっかりと伝わってないという点もあると思います。

今のことだけ考えれば、林業だけに集中すればある程度の儲けを作ることもできますが、長期的な視点で見ると難しいです。 防災・社会貢献といったすぐにはお金にならない分野にも参入していくことで、いつか自分たちに帰ってくると信じています。

また、同業者のなかでも林業の価値を落とさないために、少し料金が高くなっても丁寧な仕事を大切にしようという動きもあります。 複雑に生えた木を切るのは高度な技で、少しでも失敗すれば簡単に屋根に穴が空いたりもします。

業界が疲弊していかないためにも、同業同士で叩き合いをしてしまうのではなく、仕事のそのものの価値を上げていこうとしています。 価値のあるものがちゃんと評価される、自分にできる範囲でですが、そういうことができたらいいなと思っています。 いいことをしているのにお金につながらない、理不尽を感じている、そんな業界を少しでも改善できるよう数値化など 仕組みづくりに取り組んでいきたいと思っています。 社会貢献もしながら、しっかりお金もうけにも繋げて、持続できる形を作り上げたいです。