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【開催報告】寄付からはじまる社会貢献・事業創造
~新たなパートナーシップからうみだそう~
※こちらは、旧団体での開催となります。
2022年6月21日、GREEN×GLOBE Partners(GGP)、社会デザイン・ビジネスラボ(SDBL)の共同主催で
【寄付からはじまる社会貢献・事業創造】をテーマにオンラインワークショップを開催しました。
オリエンテーション
はじめに共同主催のGREEN×GLOBE Partners(GGP)、について、三井住友フィナンシャル・グループの山北氏よりご紹介をいただきました。
GGPは、環境・社会課題解決の「意識」と「機会」を流通させるという目的で、2020年に三井住友フィナンシャル・
グループが設立しました。主に、情報発信・ネットワーク構築・共創のお手伝いをしています。
現在、参加企業が508、32回のイベントに、のべ3000人以上がご参加いただいています。
講演
講演1 神戸市のふるさと納税の取り組み(神戸市企画調整局参画推進課 保科 暁子氏)
全国的に、個人のふるさと納税は、右肩上がりに増えています。
寄付の増加とともに、ふるさと納税は本来の主旨から外れて、自治体間で返礼品競争が加熱してきている傾向がありました。
しかし最近では、クラウドファンディングなどにより「寄付をする」という文化が若者にも根付き、物だけでなく背景や
ストーリーに注目して寄付をする方が増えてきました。
使い道にも着目する傾向があるので、自治体も課題解決を前面に押し出したクラウドファンディングや、
複数の自治体で一緒に返礼品を出したり、交流人口を増やすために泊まりに来てもらったりなど、
積極的に取り組んでいるところが多くなっています。
神戸のふるさと納税
【個人のふるさと納税】
神戸市のふるさと納税も右肩上がりに推移しています。
「品物型」の返礼品も人気ですが、神戸市に来て使っていただく「体験型」の返礼品にも人気が集まっています。
神戸市では寄付金の使い道も明確にしています。
特に注目されているのが、次の2つです。
・新型コロナウイルス感染症の最前線で働く医療従事者を支援
・「こども本の森 神戸」こどもたちにいっぱいの本を
このうち「こども本の森 神戸」には、個人からも企業からもたくさんの寄付をいただきご支援いただいています。
【企業版ふるさと納税】
神戸市では、企業版ふるさと納税でも、多くの企業より寄付をいただいています。
募集している事業は、個人版の使い道と同じ事業もたくさんありますが、特に企業の方には
上図の取り組みにご支援いただいています。
講演2 企業版ふるさと納税で生まれる地域と企業の新しい関係
(アステリア株式会社 エバンジェリスト 松浦 真弓)
アステリア株式会社の企業版ふるさと納税への取り組みと、地域創生プロジェクトへの取り組みについてお話しします。
私どもアステリア株式会社は、東証プライムに上場しており、「つなぐ」をテーマとしたITソリューションを提供している
会社です。
今日は「Platio」というモバイルアプリ作成ツールを活用した、地域課題解決の実例を紹介します。
アステリア株式会社の企業版ふるさと納税
アステリア株式会社では、秋田県仙北市様と熊本県小国町様の2つの自治体に、それぞれ5年/4年に渡って継続的に寄付を
行っています。
令和3年度は「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」を、信金中央金庫さんやヤフー株式会社さんと並んで受賞しました。
アステリア株式会社が受賞した理由は、「継続性があること」「地域との連携を大切にしていること」だと聞いています。
2つの自治体様とは、アプリの活用に取り組んでいます。しかし、企業版ふるさと納税では、寄付金による経済的な見返りは禁止されているので、私どもの寄付金は秋田県仙北市様では桜の保全に、熊本県小国町様では小国杉の保全に使っていただいています。
Platioを活用した取り組み事例
ここからは、両自治体のPlatioを活用した取り組みを紹介します。両自治体とも、地域課題に関する意見交換と実証実験を
共同で継続的に進め、成果を挙げてきました。
【熊本県小国町】被災情報を収集するアプリ
小国町様ではPlatioを活用して「被災情報報告アプリ」を作成しました。
災害時、現地と対策本部の間では、電話を使って被災状況を確認していました。
しかし、「電話がつながらない」「本部に問い合わせの電話が集中してしまう」などにより、状況の把握が大変でした。
それをアプリにすることで、いつでもどこでも現地から各自の端末で報告が行え、どこで何が起こっているか、誰でも
リアルタイムで現状を共有できるようになりました。
情報は一元管理されているため、災害対策本部でも、即座に対応策が検討できます。
小国町様は、さらにこの仕組みを応用して「投票者数報告アプリ」を作られました。
地域の課題に着目し、上手に活用いただいた事例です。
【秋田県仙北市】さまざまなアプリ活用の実証実験
仙北市様には上図のようにさまざまなアプリの実証実験にご協力いただきました。
中でも「角館の桜まつりアプリ」は、コロナ禍で中止になってしまった桜まつりを、安全に行えるように作成した
アプリです。「開花・混雑状況チェックアプリ」や「トイレチェックアプリ」により、これまであったトランシーバの
繋がりにくさやデータとして残らないといった問題が解決され、職員間の情報共有はもちろん、現場の3密回避や衛生管理の徹底にも繋がりました。
このように、まだ世の中にない地域課題解決のアイディアをいただきながら、地域のみなさまと連携を進め、地域と企業の
新しい関係作りを進めています。
いのべ場を使ったワークショップ
今回はオンラインのため「Miro」というオンラインのホワイトボードを使って、ワークショップを行いました。
株式会社JSOLが考案した「いのべ場」の方法論を体験していただきます。
1.全員でキーワード出し
寄付と言っても考え方や価値観によって捉え方も違ったり、分野やカテゴリによってさまざまな考え方があったりします。
今、課題として捉えていることなどを付箋1枚に1キーワードを書いてもらいます。
みなさんから出たキーワードで色々な言葉に触れることにより、アイディアや発想が広がるというやり方です。
2.各チームでワークショップ
最初にチームビルドでチームの中で自己紹介をしていただき、その後アイディアを出します。
アイディアの出し方の参考として、上図のフレームをMiro上におきました。
我々の一般的なやり方は「強みと課題」の掛け算です。皆さんから出たキーワードを掛け算して、寄付を進めるアイディアや寄付をしにくいと思っている人への投げかけ、寄付を貰う側のアイディアなど、自由にアイディアを出していきます。
3.アイディアの一覧
本来はアイディアを出した後、ビジネスモデルとして落とし込んでいくのですが、今回は時間が短いのでアイディアの
一覧まで行いました。
発表
4チームがそれぞれ発表を行いました。
【チーム1】
「地方では変革マネジメントに長けた人材がいないので、普段のオペレーションは回るが、新しい取り組みをしようと思うと指導できる人がいない」という問題に寄付的な考え方を組み合わせて考えました。
・「寄付した先に出向する」
出向することで、自分の会社が出したお金、リソースがどのように使われているかが体系的に理解できる。
・「寄付アライアンス」という考え方
自分が貢献したいと思っている地域に、商社から1人、銀行員から1人、広告会社から1人など、色々な人が結集して、
社会貢献型事業をうみだしていく。
・1社だけではできない、1人だけではできない事業創造が、寄付という入口から地域に大きなソーシャルビジネスが生まれる可能性になる。
【チーム2】
「地域と企業を結ぶという」という視点から意見を出し合いました。
・地域の教育機関との連携として、大学に人材を派遣して人を呼び込み、地域を盛り上げる。
・「共同山主」の提案
「地域資源としての山を上手く活用したい」「放棄されている山林をなんとかしたい」という思いから、環境としての
山を上手く活用するため、「デジタルデトックス」「瞑想」などのコンテンツを掛け合わせ、新しい活用の場として、
社員旅行の復活だとか、社員研修の場としての活用などの繋がりになるのではないか。
・寄付先を新規事業PoC先、テストマーケティングの場として活用
企業側はそういう場所があることで、簡単にテストができるので嬉しいし、行政側でも、新しい人材を呼び込むきっかけに
なり、関係人口の増加も見込めるのではないか。
【チーム3】
神戸市のご担当者がいらしたので、いい意味で官民連携の話などができました。
その中で5つテーマが上がりました。
・在日の人の姉妹都市とふるさと納税を結びつけ、伝統武道・伝統食などから日本文化に繋げる。
・「ふれあいスポーツ教室とふるさと納税」
地元のスターから学ぶ機会やふるさと納税を起点にボランティア交流をする中で、色々な人が繋がっていく仕組みを作ったらどうか。
・人間工学にこだわりぬいた都市再開発、スーパーエルゴノシティへの寄付の関わり。
・脱プラスチックの視点で、マイクロプラスチックでアートを作ったり、海底へVRやARでマイクロプラスチックを
見にいったりなど。
・高排出企業から自治体へ寄付をすることで森林育成などを支援。
神社に奉納すると名前が載る札が掲げられるのを応用して、寄付を紐づけていったらどうか。
【チーム4】
チーム4では3人で色々な意見が出ました。
・寄付者とイベントをマッチング
寄付を通じて、地方の大会にエントリーする権利など。
・企業版ふるさと納税の活用について、仕組み作り
フードバンクとかデジタル地域通貨とか、地方がやりたい取り組みをもっと前面に出して、仕組みを丸ごと寄付してもらう。
・定性的な指標
企業側ではなぜ寄付を行っているのか説明するのが難しいので、寄付先と企業が一緒に定性指標を探っていく仕組みができたらいい。
・労働提供型の納税
寄付とセットにして、例えば、森林に植林する人の労働を派遣するなど。
講評 立教大学 中村陽一氏
みなさん、お疲れ様でした。みなさんの発表を聞いて、寄付行為の仕組みについて知恵を集めることの大切さを改めて感じました。 私は40年くらいNPOや市民活動に関わり続けていますが、寄付は永遠のテーマです。 寄付行為は昔からあるだけに、どうしても固定した考えになる傾向があり、NPOや市民活動でも、どうしても枠組みや前提などにより固定的な発想になりがちです。 今日うかがったさまざまな知恵とアイディアは、私が常々思っている「寄付ってこういう形になっていけばいいな」という思いに道を開く、非常に具体的なアイディアがたくさんありました。例えば「社員旅行」と「寄付行為」を結びつける発想は非常に面白いと思います。 これまでの寄付の常識を覆していく、それは私が続けている社会デザインの発想にも繋がると感じました。 大事な点として、寄付行為をお金を出すというシングルアクションに終わらせずに、そこから関係性を紡ぎ出していくようなアクションに発展させる必要があると思います。 今までの市民活動やNPOでは、寄付行為を狭く考えていたがために、上手くいっていなかった点があります。その点でこのようなアイディアを、長く活動してきた人たちにも聞いてもらいたいと思いました。 今回はGGPとJSOLという場で行いましたが、今度はセクターが違う人とも広がっていってほしいと思います。