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【開催報告】第3回社会デザイン・ビジネスラボWebセミナー
社会デザインとバリアフリーICTサービス
~インクルーシブデザインからエイブルな(可能性を拓く)社会デザインへ~
より広く障害のある人の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的な障壁の除去をするバリアフリーや 障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいようあらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方のユニバーサルデザインは 社会デザインをする観点で非常に大切なポイントになります。
社会デザイン・ビジネスラボのバリアフリー研究会で、これからの社会のあり方とバリアフリーを実現するICTサービスの事例を紹介し、 リアルタイムでの質疑応答を交えたWebセミナーを開催しました。
日時:2020年9月10日(木)15:00~18:00
【講演】インクルーシブデザインからエイブルな(可能性を拓く)社会デザインへ
はじめに、社会デザイン・ビジネスラボ会長、立教大学社会デザイン研究所所長の中村陽一より
「インクルーシブデザインからエイブルな(可能性を拓く)社会デザインへ」と題して講演いたしました。
講演では、経済的な要因や社会的な要因により、「社会的排除」といった状況に置かれている人々がいる中で、 社会デザインが担う役割について話をしました。これからますます、社会デザインの特質である「領域横断性・越境性・学際性・創発性」を活かしたエイブルな社会デザインが必要になっていきます。
【講演】「持続可能な開発目標(SDGs)とインクルーシブな社会」
次に、プレゼンターより「持続可能な開発目標(SDGs)とインクルーシブな社会」と題してご講演いただきました。
講演では、SDGsの土台となる持続可能な開発(Sustainable Development)という概念では、 「世代内の公平」と「世代間の公平」の双方を同時に実現する「ゆたかさ(Development)」の実現が重要であるとお話しいただきました。
さらに、SDGsを自分事化するための8つのフェーズが示され、個人・企業ともに「わたしのゆたかさは他の人のゆたかさを生み出しているだろうか」 という視点を持って行動することが必要であると述べられました。
【事例紹介①】車椅子ユーザー向けのバリアフリーマップサービス「WheeLog」
事例紹介として、最初に立教大学社会デザイン研究所の研究員である荒井雅代様に車椅子ユーザー向けのバリアフリーマップサービス「WheeLog」についてお話しいただきました。
「WheeLog」では車椅子ユーザーが安心して外出できるための情報が不十分であることに着目し、 車椅子での走行ログなどを織り交ぜた当事者に本当に使いやすいアプリの設計を目指されています。 そのほかにも、街歩きのイベントを開催し車椅子体験や車椅子ユーザーとの交流によって街のバリアフリー環境を知ってもらう工夫もされているそうです。
【事例紹介②】視覚障害者向けの音声ナビゲートサービス「ナビレコ」
次に、視覚障害者向けの音声ナビゲートサービスを運営されているプレゼンターよりお話しいただきました。
サービスには、外出前、外出中にそれぞれ経路を確認することのできる機能が搭載されています。
また、マップに入力されているガイドは目の見える人が他のマップなどを参考にポイントを入力することで役立つ情報が増えていくという点も特徴的です。
【事例紹介③】要配慮者と支援者のマッチングサービス「袖縁」
続いて、要配慮者と支援者のマッチングサービス「袖縁」を手掛けられている、株式会社袖縁 代表取締役の友枝敦様と、連携パートナーからお話しいただきました。
友枝様より、要配慮者と支援者双方の心のバリアを軽やかに乗り越えるアプリ「袖縁」をご紹介いただきました。 その中で、各要配慮者がどのような配慮を必要としているのか「あんちょこ(トリセツ)」を作ることが重要なポイントであるとお話しいただきました。
「あんちょこ(トリセツ)」について介助士の視点から、「百人百様」の特徴がある中で介助も百人百様になる必要があるとお話しいただきました。
座談会
セミナー後半では、登壇者の皆様に加えて社会デザイン・ビジネスラボ事務局長の三尾幸司も加わり「座談会」を実施しました。
活動のきっかけと継続のために
プレゼンター: 身近に車椅子ユーザーがいないのに、なぜ興味を持ったのか、とよく聞かれます。 きっかけは車椅子ユーザーたちと飲みに行こうと思いお店に予約電話をしたとき、車椅子複数台の利用は困りますと断られた驚きの経験です。 下見をして通路幅や他のお客様に迷惑がかからないと思ったのですが断られました。気持ちよく利用できる場所を知りたいという思いが活動のきっかけです。 一方、自分が助けなくてはいけないという強い思いがある人、自己犠牲型で取り組む人もいますが、それだと活動は続かないです。
息が切れちゃいます。
車椅子ユーザーも「人として見て欲しい」と言うのが真の姿であり、特別視して接するのではなく適切な配慮をすれば十分だと感じます。
プレゼンター: 健常者とどう繋がって仲間を増やすかがミッションです。 視覚障害者の需要に対して健常者の供給が足りておらず、リクエストがたくさんあります。 身の回りを杖で確認する、音で判断する訓練はするが、それは自分の身の回りの危険回避だけ。 視覚障害者は、行き先への地図を描けないため、そこをどうカバーするのか、当事者としても考えたい。
プレゼンター: 同僚の「視覚障害者の知人が“駅が怖い”と言う、ICTで何とかならない?」との一言がきっかけです。 が、私自身は幼少の頃より障害者との関わりはなく、障害者が困っていても自分では特に何もできない人間でした。 当事者レビューで、ある方が「これはいい!参加する!」と声をいただきました。嬉しい反面、正直、びびりましたが、今は普通です。 びびっていた当初は、その方を「視覚障害者」というレッテルで見ていたのです。場数を踏み、いつしか「視覚障害」という属性を持つ個人、仲間に変わりました。 「袖縁」で支援のバリアは低減できます。多くの方々に僕と同じように場数を踏んで、凝り固まった心のバリアを溶かして欲しいのです。 これにより、真の共生社会が実現できる、と確信しています。
プレゼンター: 障害や障害者には関わっていなかったが、今の団体に入ってから関わるようになりました。 幼い頃から、マジョリティの意見が正しいとされることに違和感があり、社会的に仕組みを変えないと一人で何かやっても変わらないと感じていました。 一般的に障害は福祉の問題、医療の問題だと考えられるかもしれないけれど、社会の作りを考えさせられます。 障害を手掛かりに社会の仕組みを考えるのはとてもいいことだと感じます。 福祉や医療の問題ではなく、組織の本質やビジネスのブレークスルーを考えるアプローチの一つなのかなと思っています。
ひとりひとりに合ったサービスが必要
プレゼンター: 大手企業だと「できるだけ多くの人に、同じものを効率的に」という思想になりやすいが、 そういった考えは多様性のある社会では合わなくなってきているのではないかと考えます。 「あんちょこ(トリセツ)」のように様々なツールがビュッフェのように使えるのがいいですね。
プレゼンター: 仲の良い車椅子ユーザーから「もっと早く歩いて」と言われることがあります。 私たちは、車椅子ユーザーを助けなきゃいけない存在だと決め付けているのかもしれない。しかし実際には、車椅子ユーザーに自分の歩くスピードに合わせてもらい、 電動車椅子に荷物をかけさせてもらっています。私が助けられています。一方、車椅子ユーザーにとっては段差がバリア、視覚障害者は段差があったほうがいいと聞きます。 要求が違うから別で話し合うのではなく「私のゆたかさは他の人のゆたかさを生み出す」仕組みを考えるために、一緒に考えることが大切だと感じました。