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【開催報告】社会デザイン・ビジネスラボ Webセミナー関係
人口創造と地域コミュニティデザイン

居住者や観光客としてではなく、地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」と、関係人口想像のための「地域コミュニティデザイン」の あり方をテーマにWebセミナーを開催いたしました。

日時 2020年12月18日(金)13:30~15:30
会場 オンライン

【講演①】「関係人口創出」と「次世代ツーリズム創造」

「関係人口創出」と「次世代ツーリズム創造」に取り組まれる当日プレゼンターより、ご講演をいただきました。

日本における交通事業者の課題の一つとして、地域における高齢化や人口減少、東京一極化による移動の需要の減少が挙げられます。 それによって、さらに地域と東京の繋がりが薄れるという悪循環が発生する恐れがあります。

そこで、地域と都市部を長期的に複数回行き来する「関係人口」を増加させる必要があると考えています。関係人口を増やすことで最終的には「定住人口」を増やすことができれば良いと考えています。 「関係人口」に関わるキーワードとしては「多拠点生活」「リモートワーク (ワーケーション)」「第二のふるさと」などが挙げられます。

これを達成するための課題要素として以下の3つが挙げられます

3つの課題要素

①気軽に地域に住める場所
②経済的な負担感が少ない交通手段・サービス
③地域で「過ごす・住む」理由

取組み内容

これらの課題の解決のために、ANAホールディングスでは以下のような取り組みを行っています。

①サブスク型の航空券の実証実験

限定的なユーザーに対し月額3万円で月に4万円搭乗可能なサービスなどの提供を検証中です。 来年度に向けて、航空券・宿泊費をセットにした「定額制ワーケーションパッケージ」なども構想中です。

②ANAシェア旅

シェアリングエコノミーの考え方を活用したツーリズムを推進しています。旅先で地域の住人から部屋や交通手段を借りると同時に、 自身が旅をしている時に、空いた自身の部屋や交通手段を貸し出したり、自分のスキルをシェアして体験を提供することを促進しています。

③Journey+

同じ課題や趣味嗜好を持ったコミュニティで、一緒に社会課題解決や自己成長を目的とした旅をする次世代団体旅行サービスです。 「観光」以外の目的や価値を提供しています。 これらの他にも、全国とのつながりを持つANAの強みを生かして、地域と連携しながらワーケーションの推進や多拠点生活の推進などにも取り組んでいます。

【講演②】地域コミュニティと複業

続いて、プレゼンターより「地域コミュニティと複業」と題してご講演いただきました。 150人の複業ワーカーからなるWork Design Labの地域コミュニティにおける実践事例をお話しいただきました。

コロナ禍における「危機と目覚め」によって多くの企業で「副業・兼業」の解禁、 さらに大企業でも場所を選ばずに働くワーケーションが選択肢に入ってきました。 また、個人も一つの企業だけではなく様々な場所においてキャリアを築いていこうとする流れも生まれています。 そのような中で、地域コミュニティにおいて複業ワーカーをどのように取り込んでいくのがいいのでしょうか。

Work Design Labには若者から60代までの幅広い世代の複業ワーカーが所属しています。 本業として様々な組織に属するメンバーがチームとなって、地域企業の支援を行い、その中で地域コミュニティのつながりが醸成されていきます。

複業ワーカーが複業を行うにあたって「金銭的価値と非金銭的価値」の二つがあります。 その中でも地域コミュニティにおいて複業ワーカーを取り込んでいくためには「非金銭的価値」を高める必要があります。

そのための取り組みとして「ローカル・コミュニティ・プラットフォーム(LCP)」を推進しています。 それぞれの複業ワーカーの価値となるものをプラットフォーム化して集めることで、一つの地域の「非金銭的価値」をより見やすくする構造です。 一つの地方企業と複業ワーカーのマッチングのみではなく、学校や地域メディアなども含めてマッチングができるようにすることで地域全体と 個別複業ワーカーとの濃いつながりができるようになります。

また、「複業旅行プロジェクト」といったコンセプトを上げ、複業ワーカーのみならず、その家族も含めて地域コミュニティとのつながりを作ろうとする取り組みも行っています。 企業の側からだけでなく、複業ワーカー個人の視点に立って地域コミュニティとの副業での関わり方を考えていく必要も出てきています。

パネルディスカッション

セミナー後半では、登壇者の皆様に加えて社会デザイン・ビジネスラボ事務局長の三尾幸司も加わりパネルディスカッションを実施しました。

地域に入っていくことの難しさとコツ

中村: 社会デザインは人と人、人と地域の関係のあり方を時代や地域の状況の変化に応じて組み換えていく。 まさに、お二人の事例に当てはまると思います。ポジティブに進めていきたいと考えている一方で、 地方や地域は一筋縄では行かない、文化の生態系が強くてなかなかすぐには変わらないところもありますよね。 その中で取り残されてく人もいる。そこを乗り越えていく方法や事例があったら知りたいです。

三尾: 私も同じく、地域社会に入っていくことには独特の難しさがあると感じています。 地域に新しく入っていく時に感じる難しさと入っていくコツ等あったらお聞きしたいです。

プレゼンター: 「巻き込まないでくれ」という意見を地域から感じることは、やはりあります。 「巻き込む」というよりは新しく「関係人口」として来た人同士で地域の人のためにいいものを作ろうとすることが必要なのかなと思っています。 例えば、その地域にパン屋さんがなかったら、「関係人口」同士で焼き立てのパンが食べられるお店を作るとか。

プレゼンター: 地域コミュニティに入っていくところに関しては、やはり信頼性を担保されないと難しいと感じています。会社の看板を持っていてもその会社のイメージが人によって違ったり・・。 なので、元から地域側にとって信頼性のある人と一緒に入ることを意識しています。入った後に溶け込むためには、 例えば地域の大学生を巻き込んだりすると地域側の担い手も増やすことができるので一つのアイデアとしてあるかなと思います。

中村: お二人のお話しされていることともつながるのですが、「顔が見えるようになる」ということが本当に大事です。 あとは地域の方にとって提案の最終的な形が見えることも大事で、効果が実感できるような見える化が大切だなと感じます。

「移住人口」につながる体験の重要性

三尾: 関係人口や移住人口になっていくためには「体験」が重要だと思います。 お二人がやってきた実践の中で「体験」によって生まれた変化をお聞きしたいです。

プレゼンター: 一つ事例として思ったのは、Journey+で神山町に行った時に、参加者の方々がいく前には移住できる条件や、できることは?というマインドセットに行くんですよね。 ですが、実際に行って街の人々と交流すると、街の人々は求めることはなくて、移住希望者の人々の「やりたい」「できる」を支援しようというスタンスなんですよね。 そこのギャップが「体験」によってわかるのはいいなと思いました。

プレゼンター: 「やってみる」「行ってみる」によって気づくことはたくさんあると思います。その前提でどう取り組めばいいかっていうところは2つポイントがあって。 一つ目は「一歩目のハードル」を下げることです。このためには、一人で取り組むのではなく複数人で取り組むと「体験」をしやすいのかなと思います。 二つ目は早めに事例を作ることです。 どこか一つの企業でもいいので、経済的メリットが生まれる事例(企業側の体験)を先に作ることがポイントだと思います。 それによって、地域内で他の企業や組織にもつながりが生まれます。

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