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社会デザイン・ビジネスラボ(SDBL)は、2025年12月18日(木)・19日(金)の2日間、大阪府堺市の大阪公立大学 中百舌鳥キャンパスにて「第3回社会デザイン・ビジネス研究フォーラム2025 in 堺」を開催いたしました。
第1回の青森、第2回の高岡に続く3回目の開催となる今回は、「共創・つながりから始まる社会づくり」をテーマに、企業の新規事業担当者、スタートアップ、大学、自治体など、社会課題解決に取り組む多彩な登壇者が堺に集まり、2日間で20を超える事例発表・講演が行われました。
本レポートでは、当日の様子をプログラムに沿ってご紹介します。
開催概要
- 日時
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DAY1:2025年12月18日(木)13:00〜17:00
DAY2:2025年12月19日(金)10:00〜16:00 - 会場
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大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス
大阪府堺市北区学園町1番1号 - 参加費
- 無料 ※懇親会費は別途
当日の様子
DAY1(12月18日)
DAY1は、株式会社JSOL ビジネスデザイン&マーケティング部長で当ラボ事務局長の三尾幸司による開会挨拶で幕を開けました。SDBLの成り立ちと活動を紹介するとともに、「講演の合間の休憩も、ぜひ交流の時間として使ってほしい」と参加者に呼びかけ、2日間のスタートを切りました。
社会デザイン・ビジネスラボが目指す社会づくり
社会デザイン・ビジネスラボ 代表理事
中村 陽一
キーノートでは、代表理事の中村陽一が登壇。社会デザインを「さまざまな関係性を編み直し、生かすこと」と捉え、経済の繁栄と人々の暮らし、地球環境は二者択一(トレードオフ)ではなく、互いに高め合う「トレードオン」の関係として組み立て直すべきだと語りました。
そのうえで、これからの社会づくりのキーワードとして「リジェネラティブ(再生型)」の発想を提示し、社会的インパクトを生むためには金銭的リターンだけでなく、活動に関わることで得られるアイデンティティやプロセスそのものの価値にも目を向ける必要がある、と締めくくりました。
未来を創るイノベーティブ都市 堺
堺市 東京事務所 所長
羽田 貴史 氏
開催市である堺市からは、東京事務所所長の羽田貴史氏にご登壇いただきました。世界遺産・仁徳天皇陵古墳をはじめとする百舌鳥古墳群や、刃物・線香などの伝統産業といった堺の顔に加え、臨海部での持続可能な航空燃料(SAF)プラントやAIデータセンターの立地、市街地での自動運転バスの実証実験など、伝統と先端が同居する堺の今をご紹介いただきました。
首都圏企業と連携した高齢者の認知症予防実証や学校での探究学習など、共創による地域課題解決の実例も豊富に語られ、フォーラムの舞台・堺への理解が深まる講演となりました。
産官学+地域住民の共創で取り組む公園の活性化事業
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
杉本 良平 氏
杉本氏には、豊中市の千里中央公園を舞台にした地域活性化事業についてお話しいただきました。複数の企業がチームを組んで公園の指定管理に参画し、百貨店で培った接客・企画のノウハウを公園運営に持ち込むという挑戦です。
あえてゴールを決め込まず「まず集まる」ことから始める共創の進め方が印象的で、その取り組みは近隣市のまちづくりにも波及しつつあるといいます。
廃棄物処理業者の選別作業DX
トヨタ自動車株式会社
三村 健志朗 氏
トヨタ自動車の社内新規事業として資源循環に取り組む三村氏は、リサイクルの成否を左右する廃棄物の「選別」の現場に着目。廃棄物処理業者の選別作業をセンサーと動作解析で支援するDXサービスを紹介し、選別の精度を上げることが処理業者の収益改善と資源循環の両方につながることを示しました。
発表後には会場から質問が相次ぎ、分別の自動化の可能性をめぐって活発な議論が交わされました。
見えない主役「土の微生物」と大豆の物語
― デジタルがひらく新しい農業の未来
社会デザイン・ビジネスラボ 事務局長
三尾 幸司
SDBL自身のプロジェクトからは、大豆を軸にした農業事業の現在地を報告しました。研究機関と連携し、土壌の微生物データと栽培・気象データを組み合わせた「デジタルツイン農業」に挑む取り組みで、富山・愛媛・福島の3拠点では耕作放棄地の開墾から大豆栽培までを実証中です。
土壌の見える化サービスや大豆加工品ブランドの展開も紹介し、地域とのつながりに根ざした再生型農業の可能性を提示しました。
「孤立死」という人災からの脱却
高齢者市場に潜むビジネスチャンスと
三方良しモデルとは
日伸貿易株式会社
竹本 光伸 氏
竹本氏は、孤立死の本質は「一人で亡くなること」ではなく「亡くなったことに誰も気づかず、長く放置されること」にあり、それは防ぐことのできる「人災」だと訴えました。
自社で開発したセンサーによる見守りサービスと死後事務委任の仕組みを組み合わせることで、高齢者は安心して部屋を借りられ、貸主や管理会社はリスクを抑えて高齢者を受け入れられる。入居者・貸主・管理会社の「三方良し」を実際の導入事例とともに示す講演でした。
小さな声が社会を動かす
現場が教えてくれた共創の力
合同会社ReeveSupport
三澤 由佳 氏
看護師として、また堺市内の地域包括支援センターで保健師として高齢者支援の現場に立ってきた三澤氏。相談業務のなかで最も多かった「移動の悩み」に応えるため、介護タクシーをすぐに見つけて呼べる配車アプリを立ち上げた経緯を語りました。
ご自身も介護タクシーのドライバーとして現場に立ち続けているという言葉に、「小さな声」を事業に変えていく共創の原点が表れていました。
SMBC京大スタジオが目指す社会課題解決
京都大学
多田 理紗子 氏
多田氏には、京都大学と三井住友フィナンシャルグループ、日本総合研究所による産学連携の枠組み「SMBC京大スタジオ」をご紹介いただきました。
発達障害特性のあるIT人材の就労環境づくり、貧困・虐待の連鎖を断つ教育の普及、高齢期の意思決定支援など、進行中のプロジェクトはいずれも社会課題のど真ん中。大学の知を社会に開いていく産学連携の新しい形が示されました。
都市型×ローカル
価値創造のプラットフォーム
住友商事株式会社
南 光祈 氏
DAY1の締めくくりは、住友商事の南氏による都市とローカルをつなぐプラットフォームの話題でした。
東京・大手町の会員制オープンイノベーション拠点と、福島県浪江町での復興・まちづくりプログラムという2つの「場」を紹介し、都市の企業人材と地域の実践者を行き来させるコミュニティマネージャーの役割の重要性を強調しました。
懇親会
DAY1終了後には、会場を堺東に移して懇親会を開催しました。立場や地域を越えて参加者同士が語り合い、名刺交換や情報交換にとどまらず、その場で次の連携の相談が始まる場面も見られました。こうした出会いの積み重ねこそ、研究フォーラムを各地で開催する醍醐味です。
DAY2 (12月19日)
2日目は、企業発の新規事業と、開催校である大阪公立大学の研究者による講演を中心に、朝から夕方まで濃密なプログラムが続きました。
私人の厚意に依存する社会課題解決の現場
新規事業で変革すべき課題の本質とは
株式会社オプテージ
廣田 安將 氏
堺市在住でもある廣田氏は、分譲マンションの管理組合が無報酬の役員の「善意」に支えられている構造的な問題を指摘。大規模修繕をめぐる不透明な商習慣の実例も交えながら、修繕のコンディション把握・事業者マッチング・合意形成支援を通じて、この市場の健全化に挑む「マンション修繕なび」の取り組みを紹介しました。
行政との連携やセミナー開催など、地道な信頼づくりの積み重ねが語られました。
体験格差を園から埋める
潜在保育士と共創する
「少し背伸び体験」の標準化
関西電力株式会社
仙石 雄大 氏
関西電力の社内起業支援制度に挑戦中の仙石氏は、家庭環境による子どもの「体験格差」という課題に対し、保育園を起点に自然体験や運動体験を届ける事業構想を発表しました。
検証途上の仮説や悩みも率直に共有され、会場からのフィードバックを求める姿勢が印象的な、フォーラムらしい発表となりました。
アスリートとファンの夢をともに育む
GOATUSが目指す新しい応援のかたち
株式会社NTTデータ関西
飯田 健太 氏
飯田氏は、競技だけで生計を立てられるアスリートがごく一部にとどまる現実に対し、ファンからの応援金の9割以上を選手に届けるギフティング型応援サービス「GOATUS」を紹介しました。
実業団チームや大学スポーツでの活用事例を交えながら、スポーツを支える新しいお金の流れづくりについて語りました。
マッチングで終わらない
オープンイノベーションの基本
株式会社ユニッジ
土井 雄介 氏
数多くの企業の新規事業支援に携わってきた土井氏は、オープンイノベーションの現場が「とりあえずつなぐ」マッチングで終わりがちな実態に警鐘を鳴らしました。
大切なのは「オープン」の前に「イノベーション」、つまり解くべき顧客課題が先にあること。地域発の企業が数多く生まれる日本の強みを活かした共創の進め方を、実践に裏打ちされた言葉で語りました。
防災領域での社会課題を
ビジネスで解決するために必要なこと
株式会社WAVE1
吉村 拓也 氏
消防設備士でもある吉村氏は、法定の消防設備点検の実施率が全国で半分程度にとどまる現状と、点検を担う人材の慢性的な不足を指摘しました。
業界特化の人材シェアリングサービスや防火防災の診断事業を通じて、「コスト」と見なされがちな防災を建物の資産価値に結びつける挑戦を紹介しました。
遊び心が、新たな越境を生み
共創の一歩を動かす
一般社団法人PlayGround 代表理事
横田 聡 氏
午後の口火を切った横田氏のテーマは「遊び」。人と組織が慣れた環境の外へ一歩踏み出す「越境」を後押しするのは、義務感ではなく夢中になれる遊び心だとして、レゴやカードゲームを使ったワークショップの実践を紹介しました。
自由度が高すぎると人は動けなくなる。失敗から学んだ「ほどよい制約」の設計論など、共創の場づくりに携わる参加者に響く内容でした。
タケのおがくずで作ったミミズ堆肥で
植物を病気に罹りにくくする方法
大阪公立大学 農学研究科 教授
東條 元昭 氏
ここからは開催校・大阪公立大学の研究者陣が登場。東條教授は、河内長野市のすだれ製造で出る竹の粉砕材をミミズの力で堆肥化し、その堆肥を土に混ぜると作物が土壌病害にかかりにくくなるという研究成果を紹介しました。
全国で拡大する放置竹林の問題と農業の連作障害を同時に解決しうる発想で、質疑では大豆栽培への応用や事業化の可能性など、会場との議論が広がりました。
「できたらいいな」を「できる」に変える!
地域創生AILabのススメ
株式会社JSOL
藤田 聡明 氏
藤田氏は、生成AIによってアプリ開発のスピードが劇的に変わった現在地を、その場でのデモを交えて紹介しました。
効率化の道具にとどめず、一次産業や観光など地方でこそAIを価値に変えるべきだとして、富山で自治体・地元エンジニアとともに開催したAIハッカソンの成果を報告。参加をきっかけに富山との関わりを深めた人が現れるなど、テクノロジーが関係人口を生む手応えが語られました。
高精細な植物デジタルツインと
農業XRロボティクスの研究開発
大阪公立大学 工学研究科 教授
福田 弘和 氏
福田教授は、ゲームエンジンを使って植物を葉脈のレベルまで仮想空間に再現し、農業ロボットの動きを検証する「植物デジタルツイン」の研究を紹介しました。
農業人口の減少を見据えたヒューマノイドロボットの活用から、将来の月面農場構想まで、スケールの大きな研究ビジョンに会場が引き込まれました。
「見ること」から動作、行動を考える
視機能およびスポーツビジョンの理解と活用
大阪公立大学 国際基幹教育機構 准教授
吉井 泉 氏
トップアスリートの視覚機能の測定・トレーニングを長年手がけてきた吉井准教授は、競技力の高い選手ほど「見る力」に優れていることを、豊富なデータで示しました。
後半は子どもの視力低下やスマートフォン利用の低年齢化に話題を移し、日常生活での目との付き合い方まで、競技の枠を超えて役立つ知見が共有されました。
中之島ロボットチャレンジに見る!
人と共存する自律移動ロボットの
地図生成・走行技術
大阪公立大学 工学研究科 教授
田窪 朋仁 氏
田窪教授には、大阪・中之島の公園を舞台に2018年から続く自律移動ロボットの公開実証イベント「中之島ロボットチャレンジ」をご紹介いただきました。
屋外の公共空間でロボットを走らせるための地図生成・走行技術の解説とともに、地元経済界や大学が連携して技術者の挑戦の場を関西につくってきた歩みが語られました。
高齢者が暮らしやすい住環境を考える!
臨床・研究・実践から得た知見を通して
大阪公立大学 リハビリテーション学研究科 講師
上田 哲也 氏
理学療法士として臨床に立ちながら建築学も修めた上田講師は、高齢者の転倒の多くが自宅で起きている事実を踏まえ、住まいの間取りから転倒リスクを評価・指導する研究成果を紹介しました。
団地の一室に設けたモデルルームでの実践など、賃貸住宅でもできる転倒予防の工夫が紹介され、多くの参加者がメモを取る姿も見られました。
クロージング
社会デザイン・ビジネスラボ 常務理事
町野 弘明
2日間の結びには、常務理事の町野弘明が登壇しました。町野は、かつて自治都市として栄えた堺の歴史に触れながら、あの時代の堺の黄金のリソースが鉄砲や物産だったとすれば、現代の黄金のリソースは、廃棄物や土、高齢化といった、まさにこの2日間で語られた社会課題そのものではないか、と2日間を総括しました。
当時の船に代わって、いまはデジタルやロボット、AIが地域と地域、人と人をつなぐ乗り物になるとして、社会課題をリジェネラティブなビジネスモデルへと変えていくことを参加者に呼びかけ、フォーラムを締めくくりました。
おわりに
会場をご提供いただいた大阪公立大学の皆さま、開催にあたり多大なご協力をいただいた堺市の皆さま、そしてご登壇者・ご参加者の皆さまに、心より御礼申し上げます。
SDBLは今後も、開催地の自治体・大学・企業と連携しながら、全国各地で研究フォーラムを開催してまいります。各地の実践に学び、地域を越えたつながりを育みながら、社会課題解決とビジネス創出の動きをさらに加速してまいります。
