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一般社団法人社会デザイン・ビジネスラボ(以下、SDBL)は、法人パートナー企業である株式会社ユニソン、株式会社JSOLとの協働プロジェクトとして、『循環型ビジネスの共創コミュニティ』を東海エリアで立ち上げ、2023年7月にキックオフミーティングを開催しました。
■『循環型ビジネスの共創コミュニティ』プロジェクトページはこちらから
今回は、第2回目のイベントとして、2021年11月にCEの実装と市民のウェルビーイングを目指し、「サーキュラーシティ蒲郡」を表明している愛知県蒲郡市をコミュニティメンバーと共に訪れ、循環型のモノづくりを進めている企業の訪問や、蒲郡市の活動状況を推進担当者から学ぶ現地体験ツアーを2023年11月21日に開催しました。
当日、愛知県蒲郡市の蒲郡駅に集合しツアースタートです。
蒲郡市は、人口約8万人で愛知県東部の三河エリアにあり、かつて綿織物の産地として栄えた街です。今も市内には、ノコギリ屋根の工場の姿を見ることができます。また、三河湾に面したこの地は、漁業も盛んです。そして、最も有名なのが“蒲郡みかん”!郊外の丘陵地のいたるところにみかん畑を見ることができます。海と山に囲まれたここ蒲郡は、とても自然豊かな街です。
ここからマイクロバスに乗って訪問先を巡ります。
参加者は、大手自動車メーカー、コンサルティングファーム、建築家、空間デザイナー、エクステリアメーカー、フリーランスなど、様々な業種からの多彩なメンバーの方々が集まり、皆さんマイクロバスに乗るのも久しぶりで、さながら大人の社会見学でした。全員がやや興奮気味のスタートとなりました。
今回のツアーでは、前回のキックオフミーティングでキーノートスピーチを行った新東通信サーキュラーデザインラボの株式会社新東通信 CIRCULAR DESIGN STUDIO.スタジオ長 山下 史哲 氏がアテンド役として参加してくださいました。山下 氏は、蒲郡市のサーキュラーシティの活動にも伴走されており、市内で活動している企業とも深いつながりがあります。見学ツアーに先立って、山下 氏から蒲郡市の取り組みと、今回見学させていただく企業2社の概要について情報提供いただきました。
CE実践企業の訪問
①森菊株式会社
初めに明治30年創業の繊維商社森菊株式会社へ訪問し、CEの取り組みを推進されている課長の石川 氏より同社を案内いただきました。
森菊株式会社は、古くは綿織物が盛んだった蒲郡を中心に繊維商社としてのビジネスを続けてきましたが、近年は、日本国内だけでなくヨーロッパなど海外のアパレル関連メーカーと取引が多くなっています。欧州のCEに関する情報をいち早く察知された石川 氏は、2015年頃から国内外の関係者と交流しながら循環型のモノづくりについて学びを深め、蒲郡市がサーキュラーシティを表明したタイミングで市内の企業と一緒にCEのイベントに積極的に参加しています。
持続可能なモノづくりに関して、石川 氏より「欧州のトレンドも年々変化しているように感じる」、「以前は、オーガニックな素材やカーボンニュートラルに注目が集まっていたが、昨今は人権を重視したモノづくりにトップランナーの注目が集まってきている。キャッチアップするのが難しい」、「欧州には、様々な先進事例があり、世界的に有名になっているブランドもあるがしっかりと利益を確保できているかという点では、まだまだ多くの課題を抱えているように思う」など、課題を克服するキーワードとして“ブランディング”と“異業種とのつながり”をあげていただきました。
また、「再資源化された材料を使うと現時点では、コストアップになりがちだが、ブランディングをしっかり行えている企業は、単純な価格競争には陥りづらい。」、「異業種との取り組みでは、価格ありきの話になりづらく、新たな分野を開拓できる余地がある。」など、繊維商社としてファブレスのビジネスを展開しながら、循環型の素材を使って進めている自社のオリジナル製品についてもお話しいただきました。
かつて、アパレル業界で働いた経験を持つ参加者からは、「繊維業界の難しさも知っているからこそ、頑張って欲しい!森菊株式会社と石川さんの取り組みを応援したい!」と熱いエールが送られました。
②有限会社原野化学工業所
1969年創業のプラスチックリサイクルメーカーである原野化学工業所は、顧客の要望に応じて廃プラスチックを再生ペレットにして出荷するビジネスを展開しています。
代表取締役の原野 氏は、お父様の急逝に伴って、家具メーカーの敏腕営業マンから実家のビジネスを承継されました。
元々、樹脂再生メーカーだったため、資源循環はビジネスの中心軸そのものであり、昨今のサーキュラーエコノミーの潮流は、そのビジネスの追い風になっていると強く実感されています。
従来、再生樹脂のメーカーとしてB to Bのビジネスで再生材料を顧客に届けるだけでは、いまひとつ社員に働きがいを感じさせられていなかったため、「自分たちでオリジナル商品をつくって世の中に発信していこう!」と強い意気込みで生み出された製品が「よみがえるハランガー」でした。
従来の樹脂製ハンガーは、種類の異なる樹脂(PP,PE)や金属などが組み合わされていたため、水平リサイクルが難しかったといいます。そこで、PP樹脂だけを使って作ることで何度でもハンガーとして“よみがえる”ことができるものを生み出しました。蒲郡市内のホテルでも使用され、蒲郡市で婚姻届けを提出した方に「よみがえるハランガー」がプレゼントされる取り組みも行っています。「このハンガーを使うカップルは何度でも“愛がよみがえる”こと間違いなし!」と原野 氏よりお話しいただきました。着実に、サーキュラーシティ蒲郡での存在感を高めておられる原野化学工業所でした。
見学の合間に蒲郡市の郊外を散策し、今では珍しいタコ滑り台や川沿いの道を歩きながら、蒲郡の秋のどかさを実感しました。
蒲郡市のサーキュラーシティの取り組み
見学終了後は、会議室に移動し、蒲郡市企画部企画政策課 サーキュラーシティ推進室 杉浦 太律 氏より蒲郡市のサーキュラーシティの取り組みについてご紹介いただきました。
蒲郡市では、2021年3月に2050 年までに温室効果ガス実質排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言し、2021年11月には、 サーキュラーエコノミーを温室効果ガスの排出を実質ゼロにするための手段としてだけでなく、まちづくりに組み込み、蒲郡に関わる全ての人々がウェルビーイングを実感し、このまちを誇りと思う「君が愛する蒲郡」となるよう、「サーキュラーシティ」を目指していくことを表明し、ビジョンを「つながる 交わる 広がる サーキュラーシティ蒲郡」としました。
推進するに当たり、食、健康、消費、観光、交通、教育、ものづくりの7つの重点分野を設定し、活動を進め、2023年からは、実証実験フェーズに突入しており、いくつかのプロジェクトを採択しながら実証実験を進めています。他にもメルカリと提携して、市内の粗大ごみなどをメルカリで販売する試みも実施したことで、伐採された樹木を薪として販売したり、マンホールの蓋が売れることもありました。蒲郡は、攻めています!(笑)
杉浦 氏より、サーキュラーエコノミーの考え方に共感する企業に協力いただき、さまざまなイベントや取り組みに参画していただいているとご紹介いただきました。
蒲郡市の取り組みをご紹介いただいたあとは、杉浦 氏と山下 氏でクロストークをスタートしました。実際にサーキュラーシティを市民の方々に浸透させていくのは簡単ではありませんが、実際に推進しているからこそ分かることがあります。
「同志」×「多様性」×「場」が組み合わさることで物事が進んでいくというお話がありました。
ワークショップ
参加者全員でのワークショップも開催しました。
Q.自分、所属組織、知り合いくらいの範囲内で蒲郡を舞台にサーキュラーな取り組みで出来ることはないか?
Q.出来るかどうかは別としてやったら面白いと思うアイデアを出してください。
という上記二つの問いに対してブレストを実施します。
様々なセクターから集まっているメンバーだからこそ、面白いアイデアが飛び出します。
クロージング
山下さんから「ゼロウェイスト」と「サーキュラーエコノミー」の違いについて、問題提起がありました。「どちらが良い、悪いということではなく、ゴミを単に減らすことに注力するのではなく、どうやって循環させていくかも考える後者に、より可能性を感じる。」、「環境に配慮し、経済性も成り立たせないといけない。」、「自分たちのビジネスで社会課題を着実に解決していくことが重要。」など様々な意見が交わされました。
各自がそれぞれの立場でやれることから始めていくことで、循環型ビジネスの共創コミュニティは、引き続き蒲郡市の取り組みにも注目していきます!